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業務ソフトから、あなたを遠ざけてきた入場料

業務ソフトは30年にわたり、役に立つ前に自分の仕組みを覚えることを求めてきました。勘定科目、分類、入力画面、帳票の探し方。この入場料を、ひとりで店を回している人が払うのは難しく、多くはそこで止まりました。止めていたのはソフトの性能ではありません。

更新日

スマートフォンに開かれた表計算の画面と、その隣で今も使われている紙の帳面

業務ソフトは、なぜ覚えるのが大変なのですか

一度、スマートフォンで表計算を開いたことがあるかもしれません。行と列、「書式」のような言葉が並ぶメニュー。閉じて、帳面に戻った。それは気後れではなく、値段を正しく見抜いた判断です。

業務ソフトが役に立つまでには、先に払うものがあります。勘定科目を決める。分類を作る。入力画面を覚える。必要な帳票を探し当てる。場合によっては講習を受け、詳しい人に頼む。これを全部先に払って、ようやくソフトは働き始めます。

この入場料は、担当者がいる会社なら分けて払えます。研修の予算があり、覚える時間があり、覚えた人が続けます。ひとりで、客の合間に、家の用事の合間に回している商売には、分ける相手がいません。

だから多くは払いませんでした。これは根気の話ではなく、値段の話です。そして値段はソフトの性能にではなく、その入り口にかかっていました。

以前は先に学ぶ必要があったもの、今は打つだけのもの以前:仕組みを覚える勘定科目を決める分類を設定する入力画面を覚える正しい帳票を探す手引きを読む今:言葉で伝える「先月、米にいくら使った」覚えることは、ない。止めていたのはソフトの力ではなく、その入り口だった。

「デジタル化の7割は失敗する」というのは本当ですか

本当ではありません。あの数字は実測ではなく、もともと実測だったこともありません。ソフトを売る人や、講演や記事でこの数字を聞いたことがあるなら、それは科学ではなかった見積もりが受け渡されてきたものです。

出どころは1993年のマイケル・ハマーとジェイムズ・チャンピーの著書です。著者自身が、その数字を科学的な根拠のない見積もりだと述べています。内容は業務プロセスの再構築についてで、デジタル化という言葉が使われる前のものです。

2011年、マーク・ヒューズが査読付きの論文で、この7割という数字の根拠としてよく挙げられる資料をたどりました。根拠は見つかりませんでした。30年繰り返されてきた数字に、有効な実証的裏づけはありません。

実際に測るとどうなるか。マッキンゼーが2018年に1,793人に尋ねた調査では、業績が改善し、その改善が続いたと答えたのは16パーセントでした。ボストン・コンサルティング・グループが2020年に825人の経営層を対象に行った調査では、30パーセントが目標を達成または上回り、44パーセントは価値は生んだが目標には届かず、26パーセントはほとんど価値を生みませんでした。

ここから二つ言えます。第一に、目標に届かなかったことと失敗は同じではありません。目標に届かなかった44パーセントも価値は生んでおり、これをほとんど価値を生まなかった26パーセントと足して語ることが、7割という話が繰り返し生まれ直す仕組みそのものです。第二に、これらはいずれも予算も研修もある大きな会社の話です。小さな店主が、大きな会社にできたことに失敗した、という筋書きに根拠はありませんでした。

性能が高いのに、なぜ多くの導入がうまくいかないのですか

うまくいかなかった導入の原因を並べると、機能は出てきません。上位に来るのは、使われないこと、データが整っていないこと、研修が足りないことです。

この三つに共通しているのは、どれも使う人が先に払う費用だという点です。使われないのは、覚える負担が見返りより先に来るからです。データが整わないのは、整える作業に誰の時間も割り当てられていないからです。研修が足りないのは、そもそも研修が要るような入り口だからです。

私たちはこれを30年ものあいだ、変革の進め方の問題と呼んできました。実際には値付けの問題であり、値段は入り口にかかっていました。

小規模ではその差がそのまま普及率に出ます。欧州では、業務の基幹ソフトを導入していた小規模企業は38パーセントで、大企業は86パーセントでした。同じソフトが売られていて、この差が出るのは、払える人と払えない人がいたからです。

では、帳面のほうが業務ソフトより良いのですか

良いか悪いかではありません。帳面には、ソフトが持っていない長所が本当にあります。電池が要らず、覚えることがなく、書いた瞬間に終わり、途中で子どもに呼ばれても状態が失われません。

足りないのは一つだけです。探せないこと。先月の合計を知りたいとき、帳面はページをめくらせます。内容は正しいのに、取り出すのに時間がかかります。

ですから、帳面を捨てる必要はありません。捨てるべきものがあるとすれば、「まず自分の仕組みを覚えてください」と求めてくる入り口のほうです。

この章で押さえておきたいのはここです。あなたは記録を付けない人ではありませんでした。むしろ、よく付けている人です。払えなかったのは、記録に問いを投げるための入場料でした。

これから5分で何ができますか

この章が残していく技術は一つです。今日、自分がどうやって記録を付けているかを、一文で書けること。

やり方はこうです。5分かかります。紙でも、スマートフォンのメモでもかまいません。

1. 「私は記録を◯◯で付けている」で始まる一文を、そのままの事実で書きます。きれいにしないでください。帳面と写真とメッセージが混ざっているなら、そう書きます。 2. その下に、もう一文だけ足します。いちばん大変なのはどこか。書くことか、探すことか、思い出すことか。

この二文が、あとで効いてきます。どんな道具も、この二文目に書いた大変さを軽くしないなら、あなたには要りません。逆にそこを軽くするなら、その道具は入場料を取り返しています。

そして次に誰かが新しいソフトを勧めてきたら、聞くことは一つで足ります。使えるようになるまでに、私は何を覚える必要がありますか。

FAQ

「7割は失敗する」という数字は、なぜ今も使われているのですか。
耳に残りやすく、次の一手を売るのに都合がよいからです。出どころは1993年の著書で、著者自身が科学的な根拠のない見積もりだと述べていました。2011年の査読付きの検証でも、この数字を支える実証的な裏づけは見つかっていません。
帳面をやめて業務ソフトに移るべきですか。
その必要はありません。帳面の弱点は探しにくいことだけで、内容の正しさではありません。移るかどうかは、その道具があなたのいちばん大変な部分を軽くするかどうかで決めてください。
覚えることが多いソフトは、そもそも悪い設計なのですか。
担当者がいて研修の時間がある組織向けには、合理的な設計です。問題は、その前提を持たない一人の商売に、同じ入場料が課されてきたことです。
導入がうまくいかない原因の上位に、機能不足は入らないのですか。
入りません。上位に来るのは、使われないこと、データが整っていないこと、研修が足りないことで、いずれも使う人が見返りより先に払う費用です。
小さな商売でも、いつかは業務ソフトが必要になりますか。
必要になることもありますし、ならないこともあります。判断の基準は規模ではなく、書き出しておいた問いに、その道具が答えるかどうかです。

出典

  1. Tabrizi, Lam, Girard & Irvin, Digital Transformation Is Not About Technology (Harvard Business Review, 2019)
  2. McKinsey & Company, Unlocking Success in Digital Transformations (2018)
  3. Boston Consulting Group, Flipping the Odds of Digital Transformation Success (2020)

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