「見極める力を養うべき」68.6%、「確かめたいとは思わない」31.9%
人は、確認が大切だと知っていて、それでも確認しません。電通総研と日本ファクトチェックセンターが全国5,000人に行った2026年の調査では、生成AIによる悪意ある偽情報への対策として68.6%が「利用者自らが正しい情報を見極める力を養うべき」と回答しました。ところが同じ調査で、偽・誤情報を検証する行動について最も多かった回答は「真偽を確かめたいとは思わない」の31.9%でした。この2つの数字は矛盾ではなく、正直な自己申告です。責任は自分にあると分かっている。それでも確認は面倒で、割に合わない。だから解決策は、もっと気合いを入れることではありません。確認そのものを安くすることです。
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同じ調査に並んだ、2つの数字
電通総研と日本ファクトチェックセンターが2026年に公表した「情報インテグリティ調査2026」は、全国15歳から69歳の5,000人を対象にしたものです。国際大学GLOCOMの山口真一教授が監修しています。
そこには2つの数字が並んでいます。1つは、生成AIによる悪意ある偽情報への対策として、68.6%が「利用者自らが正しい情報を見極める力を養うべき」と答えたこと。もう1つは、偽・誤情報を検証する行動について、最も多かった回答が「真偽を確かめたいとは思わない」で31.9%だったことです。
多数派は、見極める力は利用者が持つべきだと考えています。そして最大の単独グループは、確かめたくないと言っています。この2つは同じ人々の中に同居しています。
これは怠慢ではなく、コストの問題
この結果を「意識が低い」と読むのは簡単で、そして間違いです。同じ調査の別の項目を見ると、事情がはっきりします。「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」といった概念の理解度は1割未満でした。つまり多くの人は、確認をサボっているというより、確認の手順そのものを教わっていません。
そして手順を知っていたとしても、公開ウェブでの確認は本当に高くつきます。要約に添えられたリンクを開き、記事全体を読み流し、その主張を支えているかもしれない箇所を探す。1つの文につき数分。1日に流れてくる情報の量を思えば、「確かめたいとは思わない」は怠惰の告白ではなく、費用対効果の正しい計算です。人は割に合わないことをやめます。それは合理的な行動です。
意志の力を要求する対策は、この計算を変えません。変えられるのは、価格のほうです。
責任を配る前に、道具を配る
同じ調査は、責任の所在についても聞いています。生成AIによる悪意ある偽情報について、作成者以外で責任を担うべき主体として挙がったのは、情報を拡散したユーザー35.1%、拡散されるプラットフォーム27.2%、生成AIを提供する企業25.5%でした。そして、安心して情報を利用できる環境づくりを担うべき主体を問うと、最も多かった回答は「わからない・あてはまるものはない」で35.7%。公的機関33.5%、マスメディア30.4%、プラットフォーマー28.1%を上回りました。
社会的な合意が、まだ形になっていないということです。誰が責任を持つべきかで意見が割れている間も、情報は流れ続けます。だから待つのではなく、手元でできることから始める価値があります。責任の議論より先に、確認の値段を下げるほうが速いのです。
ちなみに、情報を適切に活用できる能力を学ぶ場としては、学校教育62.3%、家庭50.7%が挙がりました。教育への期待は高い。だからこそ、教える内容が「気をつけましょう」ではなく、具体的な手順である必要があります。
確認を、数十秒の作業にする
確認が高い理由は、たいてい探すことにあります。主張は目の前にあるのに、それを支える一文がどこにあるかは分からない。だから記事を読み流すことになります。
この構造を変えると、確認は別の作業になります。主張ごとに、それが載っている該当箇所へのリンクがあれば、確認は読み流しではなく、その一文への着地です。読んで、比べて、判断する。数十秒で終わります。そして全部を確認する必要もありません。判断を左右する主張、繰り返す予定の数字、驚いた内容。この3つに絞れば、1つの回答につき確認は1件か2件で足ります。
「確かめたいとは思わない」と答えた31.9%の人が求めているのは、たぶん確認しない自由ではありません。確認が仕事にならないことです。
見極める力は、道具とともに育つ
これがTatsulokの設計思想です。回答はあなた自身の文書とキュレーション済みコレクションだけから生まれ、すべての主張がそれが載っている該当箇所にリンクします。出典が答えを持っていないときは、もっともらしい何かで埋めずに、含まれていないと述べます。確認を安くすることは、確認を促す最も確実な方法です。
そして安くなった確認を何度か繰り返すと、副産物が生まれます。どの種類の主張が裏付けを失いやすいか、どの出典が強いかが、経験として身につくのです。68.6%が求めた「見極める力」は、講義ではなく、こうした小さな確認の反復から育ちます。使うほど、あなたのほうが賢くなる。それが私たちの目指す形です。
今週の練習です。登録は要りません。今日目にしたAIの回答や記事から、あなたが誰かに伝えるとしたらこれ、という主張を1つだけ選んでください。そして出典を開き、それを支える一文を探します。1つだけで構いません。「全部確かめる」は続きませんが、「1つだけ確かめる」は続きます。
FAQ
- なぜ多くの人は情報の真偽を確かめないのですか?
- 意識の低さより、コストの問題です。電通総研と日本ファクトチェックセンターの2026年調査(全国5,000人)では、偽・誤情報の検証行動について「真偽を確かめたいとは思わない」が31.9%で最多でした。同じ調査で、フィルターバブルなどの概念理解度は1割未満であり、多くの人は手順を教わっていません。
- 情報を見極める責任は誰にあると考えられていますか?
- 同じ調査では、生成AIによる悪意ある偽情報への対策として68.6%が「利用者自らが正しい情報を見極める力を養うべき」と回答しました。一方、安心できるデジタル空間の環境づくりを担うべき主体については「わからない・あてはまるものはない」が35.7%で最多となり、社会的合意は形成されていません。
- 確認を続けられるようにするコツはありますか?
- 全部を確認しようとしないことです。判断を左右する主張、繰り返す予定の数字、驚いた内容の3つに絞ります。主張ごとに該当箇所へのリンクがあるツールなら、1件あたり数十秒で終わり、習慣として続きます。
- 情報を見極める力はどこで学ぶべきだと考えられていますか?
- 同調査では、学校教育が62.3%、家庭が50.7%でした。期待は高い一方、概念の理解度が1割未満である現状を踏まえると、抽象的な注意喚起ではなく、出典を開いて該当箇所を確かめるといった具体的な手順を教える必要があります。
- この調査の概要を教えてください。
- 電通総研と日本ファクトチェックセンターによる「電通総研コンパス vol.17 情報インテグリティ調査2026」です。調査時期は2026年1月30日から2月1日、サンプル数5,000、対象は全国15歳から69歳の男女、インターネット調査で、国際大学GLOCOMの山口真一教授が監修しています。
出典
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